広島リカレント学院(第三期)2回目 2022年5月18日(水)

教養講座は、広島大名誉教授 井上研二先生による 「ロシアによるウクライナ軍事侵攻」 という講義でした。先生は、ロシア語学、現代ロシア論が専門で、現在、世界に大きな混乱をもたらしているロシアによるウクライナへの軍事侵攻に関する歴史的背景、両国の関係性、今後のなどについて、話していただきました。

 

先生から届いた講義要旨です。

 

ロシアによるウクライナ軍事侵攻は今年の2月24日に始まったが、両国間の対立はソ連が解体し、それぞれ主権国家として独立した時にすでに生まれていた。@クリミア半島のセバストーポリを基地としていたソ連黒海艦隊の所属問題Aクリミア半島それ自体の帰属の問題B核管理の問題等での対立である。また両国は同じ東スラブ民族でありながら、それぞれ兄と弟、あるいは支配者と被支配者の関係でもあった。しかしウクライナ人の方がロシア人より民族主義的意識が強い傾向が見られる。またウクライナは石油や天然ガスの産出が少なく、資源大国ロシアに依存してきたことからやむなく「付かず離れず」の関係を守り続けてきた。しかしウクライナに「オレンジ革命」を経て2005年に親欧米派のユーシェンコ政権が誕生し、EUおよびNATOへの加盟を志向するようになると、ロシア側からの締め付けや嫌がらせが繰り返されてきた。ゼレンスキー現政権はさらに親欧米的傾向が強いようにロシアのプーチン大統領には映ったようで、「ナチス・ドイツと同一視する」と発言している。
今回のウクライナ軍事侵攻の大義は、ウクライナ東部ドンバス地方に住む親露派のロシア系住民がウクライナ政権から虐待を受けているので、彼らを救済するためだとプーチン大統領が主張しており、当初ゼレンスキー政権を倒して親露派政権を樹立するため、首都キーウを攻撃、陥落させようとしたが、ウクライナ軍の抵抗と反撃が予想外に強く、この作戦を諦め、軍を東部へ転進させた。その際ロシア軍はキーウ近郊でジェノサイドとも呼ぶべき戦争犯罪が行われたとのことだ。
2014年のクリミア併合時のウクライナ軍は弱体化しており、ほとんどロシア軍特殊部隊にほとんど抵抗できなかったが、その後60億ドルに上る軍事援助をアメリカから得て、対戦車ミサイルはじめ先端兵器など装備を充実させるなど、見違えるような軍事力に様変わりしていた。ロシア軍が苦戦しているのはそこにある。ロシアはヘルソン州とマリウポリを併合することでクリミアと陸続きで南東部全域を掌握しているが、東部ではウクライナ軍の激しい抵抗で大苦戦している。こうした戦争は一刻も早く終わらせるべきだが、先の見通しが立たない。

2022年5月18日

井上研二

 

井上研二先生 井上研二先生

 

 

広島リカレント学院(第三期)1回目 2022年5月11日(水)

第三期1回目の教養講座は、広島大学副学長 佐藤利行先生による「中国文学」でした。広島大学長 越智光夫先生、副学長 佐藤利行先生共著の「知っておきたい中国故事 胡蝶は夢なのか」を題材に講義されました。現在、世界は新型コロナ、ウクライナ紛争など大きな問題が次々と発生し先が見えません。このようなとき、私たちは何を指針にして進めばよいのでしょうか。中国故事には、たくさんのヒントがあり、それを手掛かりに自分で考えることの大切さを教えていただきました。なお、越智光夫・佐藤利行共著「知っておきたい中国故事 胡蝶は夢なのか」は、第三期1回目の記念として、みなさんに進呈されました。
佐藤利行先生 佐藤利行先生

 

第三期入学式 2022年5月11日(水)

第三期入学式が行われ、広島大学副学長 佐藤利行先生、広島大学名誉教授 渡部和彦先生(牟田泰三学院長代理)から祝辞をいただきました。牟田学院長の一日も早い回復と復帰をみなさん願っておられました。
第3期入学式 佐藤先生 第3期入学式 渡部先生 第3期入学式

 

ボーリング、ミニテニス、川柳、各同好会の紹介がありました。
同好会 同好会 同好会 

 

 

第三期学院生募集中 2022年5月11日(水)スタート

第3期募集チラシ 第3期募集チラシ

 

広島リカレント学院 第二期終業式 2022年4月13日(水)

広島リカレント学院 第二期終業式が行われました。牟田泰三学院長の式辞です。
「皆さん、本日をもって、本学院二期目の授業が全て終了します。まことにお目出度うございます。このように授業を完結できたのも、学院生の皆さんの勉学意欲と熱意に支えられ、先生方の優れたご指導があったからに他なりません。この二期目の授業も、一期目と同じように、新型コロナウイルス蔓延の影響を受け、度重なる休講措置を余儀なくされました。しかしながら、慎重かつ十分な対応措置をとることによって、四十回の授業を完了することが出来ました。このような厳しい環境のもとで、対面授業を続け、一人の感染者も出さず授業を全うすることが出来たのは、学院生の皆さんをはじめ全ての関係者のご尽力によるものです。有り難うございました。二期目の授業が学院生の皆さんの勉学意欲をさらに深め、幅広い教養を形作ってくれたものと確信します。来る5月11日から始まる三期目の授業でも、目を輝かせて授業と取り組む学院生の皆さんと共に学ぶことが出来ることを期待しております。」
牟田学院長は、ご都合により欠席で、広島大学名誉教授 渡辺和彦先生が代読されました。式辞に続き、牟田学院長からのビデオメッセージ、広島大学理事・副学長 文学博士 佐藤利行先生の祝辞、16名の学生さんに皆勤賞が贈られました。三期目は、5月11日(水)から始まります。
終業式2022終業式2022終業式2022
終業式2022終業式2022

 

広島リカレント学院(第二期)38回目 2022年4月13日(水)

教養講座は、漆芸家 七代金城一国斎先生による「尾張から広島へ 漆芸家 金城一国斎の系譜と作品」でした。わが国の漆の技法には、漆絵、蒔絵、彫漆、高盛絵など、他国にない多様な装飾技法があり、その源流は正倉院宝物にあるそうです。七代金城一国斎先生は、広島で発展した高盛絵の技法を受け継がれています。高盛絵について、先生は次のように語られています。
「高盛絵は近代漆工史の中でひときわ輝く個性美を放ち続ける独特の漆芸技法です。 花や果実に誘われる蜂や蝶、それを狙うカマキリを生き生きと立体的に表現するなど独特の世界を創り上げ、19世紀末にヨーロッパで流行したアールヌーボーにも影響を与えました。広島で発展したこの技法は、歴代金城一国斎が一子相伝で受け継いで来ました。漆芸家 金城一国斎は、江戸時代後期に尾張徳川藩の小納戸御用塗師であり時代蒔絵を得意とした初代一国斎を祖とし、尾張藩を出奔し独自の漆芸を追い求め高盛絵を創案した二代一国斎、明治に入り内国勧業博覧会などに出品・受賞し漆芸技法として高盛絵を確立した三代一国斎、大正・昭和に茶道・俳句など風流人として高盛絵に色を添えた四代一国斎、帝展審査委員の赤塚自得の門をたたき蒔絵を修得し細密な高盛絵を創り上げた五代一国斎、 五代の右腕として創作を助け現在へ伝えた六代一国斎、そして彫漆や切金を加え新たな高盛絵を創造する七代一国斎に受け継がれています。」
先生は、現在、広島県指定無形文化財「一国斎高盛絵」技術保持者として、高盛絵の技術保持とその発展に尽力されています。広島にこのような素晴らしい伝統文化が残っていることを大変うれしく思うとともに、ますますのご活躍を期待したいと思います。午後はそれぞれの専門講座の授業が行われました。(事務局)
金城先生 金城先生

 

広島リカレント学院(第二期) 37回目 2022年4月6日(水)

教養講座は、広島大学(前)准教授・客員教授 白浜 博幸先生による「SDGsの時代にかかせないバイオプラスチックの開発について」という講義でした。講義のポイントは、「現在は環境を意識した商品でないと企業も生き残っていけない時代である。本講座では地球環境に優しいバイオプラスチックの意義やその利活用について言及したい。」ということでした。
先生のご専門は、界面化学・高分子化学(バイオプラスチック)で、最近、耳にすることが多いSDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)と深いかかわりがあります。SDGsは、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために揚げた17の目標です。各目標 に対して全部で169のターゲットが設定されていて、その一つにペットボトル、発泡スチロール、ビニール袋などのプラスチック問題があります。海洋等に投棄されたプラスチックがマイクロプラスチックになり、それを海洋生物が体内に取り込み被害を受けています。今、その被害が人に及ぶことが懸念されています。その解決策としての新しいプラスチック:グリーンプラ(生分解性プラ)の開発について教えていただきました。午後はそれぞれの専門講座の授業が行われました。(事務局)
白浜先生 白浜先生

 

広島リカレント学院(第二期) 36回目 2022年3月30日(水)

教養講座は、広島大学名誉教授 原野 昇先生による「フランスの少数話者言語―多言語国家フランス」という講義でした。先生から届いた講義概要です。
「フランスではフランス語が話されていると思われていますが、実はフランス語以外の言語を話す人もいるのです。主なものは、オック語、フラマン語、アルザス語、カタルーニャ語、コルシカ語、バスク語、ブルトン語の7つの言語です。フランスは多言語国家なのです。これらの言語は、話す(母語とする)人の数が相対的に少ないので、少数話者言語と呼ばれます。これらの言語を話す人にとっては、フランス語は後から学習して習得した第2の言語なのです。母語と母国語(フランス語)の2言語併用者(バイリンガル)なのです。ここで、国家、国民、国籍、国境、ということが問題になってきます。四方を海で囲まれている日本と異なり、陸続きで国境を接している国々にあっては、言語集団の地域(境)と国境とが一致していないことが非常に多いのです。」
原野先生のお話を聞き、平和を実現するためには、複雑に絡み合った言語、民族、国境、歴史などをときほぐし、みんなが納得し許容できる解決にむけての地道な努力しかないと思いました。その日を心から願います。午後はそれぞれの専門講座の授業が行われました。(事務局)
原野先生 原野先生

 

広島リカレント学院(第二期) 35回目 2022年3月23日(水)

教養講座は、広島リカレント学院長(広島大学元学長)牟田泰三先生による「浦島太郎の本当の話」という講義でした。牟田先生から要旨が届きましたので紹介します。
「浦島太郎物語には、太郎が竜宮城から帰ってみると、すでに数百年前に知っている人々はいなくなっていたという不思議な記述があります。2021年8月18日に行った教養講座講義では、この謎は相対性理論で完全に説明できるという話をしました。
確かに、この説明は科学的に明快だけど、ちょっと味気ない気もします。そこで今日は、浦島太郎のそもそもの話を調べてみることにします。
現在残っている文献を調べてみると、浦島太郎の事件は、太古の時代に本当に起こったことだとして記述されています。実際、西暦700年代に残された丹後国風土記(原本はないけどそれを写したノートがあります)に最初の浦島に関する記述があり、西暦720年に残された日本書紀には、浦島の話を西暦478年の事件として記述されています。また、西暦759ー780年に制作された万葉集巻九には高橋虫麻呂作の長歌(歌番号1740)として掲載されており、その他、日本各地に説話として残っています。鎌倉末期から江戸時代には、御伽草子、即ち絵本、として流布され、西暦1900年には浦島太郎童謡(文部省唱歌)も作られました。
浦島太郎の事件は何と約1500年も前に実際起こっているのです。これらの文献を読んで気がつくのは、常世の国(とこよのくに)という言葉です。常世の国とは、古代日本で信仰された、海の彼方にあるとされる異世界のことです。常世の国は永久不変であり、不老不死の世界であり、日本神話の基本となる概念です。浦島太郎は、竜宮城という常世の国に行っていたのです。だから歳を取らなかったのです。」

浦島太郎のお話をとおして、相対性理論という物理学の基本と日本書紀の基本の考え方を教えてもらいました。世界が少し広がったような気がします。午後はそれぞれの専門講座の授業が行われました。(事務局)
牟田先生 牟田先生

 

広島リカレント学院(第二期) 35回目 2022年3月16日(水)

教養講座は、広島大学名誉教授 谷本谷本能文先生による「ひかりと私たち」という講義でした。
先生から届いたメッセージを紹介します。
「私たちは、太陽からの光の恵みの下で生きている。本講義では、光とは何か、私たちの生活とどのように関係しているのかについて理解を深めたい。
光は、進行方向に垂直方向に振動する電場と磁場の波“電磁波”である。電磁波は、真空中を1秒間に30万km進む(光速30万km/s)。同時に、電磁波は粒子としての性質を併せもっている。波としての性質は、波の一周期の長さ(波長)と1秒間に振動する回数(振動数)で定義され、1個の光の粒子(光子)持つエネルギーは振動数とある関係を持っている。波としての光は屈折や回折などの現象を示し、例えば、情報の通信手段として使われている。また粒子としての光は、色々な物質に吸収され、その物質はエネルギーのリッチな状態になり、その状態から熱に変わったり、光(蛍光)を発したり、化学反応を起こしたりする。『虹はどうしてできるの?』『ラジオのAM放送とFM放送の違いは?』『光通信はなぜ大容量の情報が送れるの?』などなどの日頃の疑問を解決しましょう。」

光が波と粒子というの二つの性質を持っていること、それがわれわれの暮らしにどのように利用されているかなどを分かりやすく話していただきました。午後はそれぞれの専門講座の授業が行われました。(事務局)
谷本先生 谷本先生

 

広島リカレント学院(第二期) 34回目 2022年3月9日(水)

教養講座は、広島大学名誉教授 渡部和彦先生による「平和都市広島・長崎とオリンピック ー訪ね歩き体感したい平和−」という講義でした。
先生から届いたメッセージを紹介します。
この講義は、ロシア(プーチン政権)が隣国ウクライナへの侵攻の最中で行われた。
北京オリンピックに続いて開催された、パラリンピックだが、いずれも、国連が求める「休戦」を無視してウクライナに侵攻した。しかも、軍事施設だけでなく病院を含む民間施設も砲撃し、子供たちを含め多数の民間人の犠牲。許しがたい暴挙は、原発への攻撃である。ウクライナ軍の予想を超えた抵抗に阻まれたロシア軍は、その焦りからか「核」の使用を公言するに至った。「被爆者を出すな」の切実な声が、広島県内からも発せられています。古代ギリシャでは神々(オリンポス)に捧げる祭典として、スポーツ大会が4年ごとに開かれ、その期間は、一切の戦争は中止された。近代オリンピックの創設者、クーベルタン男爵(仏)は、その理念に共感し、世界各国から集う青年たちの「交流と友情」に、国際平和に貢献できる「教育的価値」を確信し、その思想は世界中に広まり、今日に至っています。
さて、「2020・広島オリンピック」招致の市民活動をご存じですか。推進派市民の皆さんは、長崎市との共催で実現させ、被爆の実態を世界伝える絶好の機会と捉えました。リカレント学院「健康づくりウオーキング」講座では、被爆の小学校や、延焼を防ぐ集団作業中に被爆し。犠牲となった、多数の生徒、女学生の名前が刻まれた碑など、各地を訪ね歩きました。それぞれの場所で感じたことは、「体感すること」の意義でした。前述の「広島・長崎」の名を冠したオリンピック招致の課題@:複数の市の名称はダメとのIOC規約が壁?規約は、変わり(次期イタリア冬季大会は、2市共催で開催)。課題A:開催都市の政負担問題。スポーツ基本法は、オリンピック等重要な国際大会は、国の積極的財政支援が規定(平成23年)。核攻撃を平気で口にする指導者の出現は、脅威です。世界に向けた、「平和教育」の重要性とその持続的な方法(戦略)は何でしょう。

先生のお話をとおして、平和の大切さ、そして平和を守り育てるための持続的な平和教育の重要性をあらため心に刻みました。午後はそれぞれの専門講座の授業が行われました。(事務局)
渡部先生 渡部先生

 

広島リカレント学院(第二期) 33回目 2022年3月2日(水)

教養講座は、広島大学名誉教授 田中久男先生による「南北戦争記念碑はなぜもめるのか?」という講義でした。
先生から届いたメッセージを紹介します。
「私の授業のトピックは、アメリカ社会で最近とみに熱を帯びてきている話題である。その起爆剤となったのが、2020年5月にミネアポリスで、白人警官の暴力によって黒人のジョージ・フロイドが殺された悲劇である。そこでまず、そうした人種差別が合衆国においては根が深いことを、17世紀初めにヴァージニア植民地に導入された奴隷制度の歴史から掘り起こした。その奴隷制度を基盤に、南部諸州が綿花王国を築き上げていくにつれて、北部の自由と平等を重んじる価値観と折れ合いがつかなくなる。ついに1860年のリンカン大統領の登場によって、連邦から離脱して南部連合を形成した南部11州は、南北戦争(1861-1865)に突入してしまう。敗戦によって奴隷制度を廃止し、連合国家を解体された南部は、『失われた大義』という特異な理念を精神の砦として、奴隷制度に替わる人種差別をジムクロウ法やクー・クラックス・クランの蛮行で継続し、その一方で、南北戦争の英雄たちの記念像を建立し、南部連合旗を誇示して、公園や通りを白人優越主義という価値観を発信する場にしてきた。それが日常の当たり前の風景であるかのような、民衆の教化手段にしてしまっているのである。これが今日、南北戦争にまつわる記念碑を残すべきか、取り壊すべきか、博物館に収蔵すべきか等の問題として、激しい討論の対象となっているのだ。」
人種差別という古くて新しい問題は、世界中の国が抱えているといっても過言ではありません。とりわけアメリカにおいては、特異な様相を示して示しています。その背景、理由、及び現在の状況について、わかりやすく話していただきました。午後はそれぞれの専門講座の授業が行われました。(事務局)
田中先生 田中先生